2003−04年度ネパール訪問報告

RI第2830地区PDG 関場慶博

[参加者] 関場慶博PDG、竹内通昭(青森東RC会長)、千葉忍(アジア親善委員)、
田名部沙織(弘前RAC)、川村大輔(弘前RAC)、高田直樹(弘前RAC)

[日程]
12月29日 成田 → シンガポール シンガポール泊
12月30日 シンガポール → カトマンズ カトマンズ泊
12月31日 ゴダワリ農場視察 カトマンズ泊
1月1日 アネコット村へ移動 タマン農場泊
1月2日 カリカ小中学校での学童健診、午後からドュリケルへ移動してドュリケルRCクラブ協議会に出席し今後のマッチンググラントプロジェクトの検討、その後English Boarding Schoolでローターアクターが人形劇上演と日本伝統の遊びなどの日本文化の紹介および交流会、夜は懇親会
ドュリケル泊(ローターアクター3名はドュリケルRC会員宅にホームスティ)
1月3日 ポリオワクチン投与活動参加、ドュリケルRC例会出席、完成したマッチンググラントプロジェクトの視察、ディーサービスセンター訪問 カトマンズ泊
1月4日 市内観光 カトマンズ泊
1月5日 クアラルンプール経由で関場、竹内帰国
1月6日 バンコック経由で千葉およびアクター3名帰国

[訪問の目的]
 ネパール国アネコット村第9区に対しての25年間に渡る農業支援は、1)同区での農作物収穫高
が他の農村の3倍 2)換金作物の増加 などで着実にその成果をあげてきました。農業そのものに対する支援は終了しましたが(第一次黒田年度)、その後もネパール親善委員会(工藤年度、関場年度)とアジア親善委員会(大柳年度、島村年度)と担当委員会の名前は変りましたが、様々な形で同区への親善・支援活動を継続してきました。
 25年間の農業支援は、アネコット村第9区での農業の発展という成果だけではなく、アネコット村でのインターアクター・ローターアクターのワークキャンプ、ドュリケルRCとのマッチンググラント(Greenery project)、現地でのポリオワクチン投与活動への参加、ドュリケル市内への植樹事業という、未来を志向した新たな成果をも生み出してきました。
 今回私たちは、下記のことを目的にネパールを訪問しました。
1) 完成したマッチングプロジェクト(Matching Grant Number:16318)の視察および今後のマッチングプロジェクトの可能性を探ること。
2) アネコット村第9区の現状視察および現地のニーズを知ること。
3) ドュリケルRCとの親睦交流活動。
4) ローターアクターが人形劇、伝統のあそびを通じて日本文化を現地の新世代へ紹介すること。
5) NID(ポリオワクチン一斉投与活動)への参加。

[活動報告および現地でのニーズ]
1.ネパールの治安状況 
ネパールの国内の治安状況は、西部ではマオイストのテロ活動が散発的に続いているものの、カトマンズおよびその周辺、東部は安全である。

2.アネコット村の現状および必要とされる援助
 3年ぶりに訪れたアネコット村は、夏の豪雨のため道路があちこちで破壊されていた。タマン農場およびアネコット村第9区での農作物の収穫は安定していた。灌漑用水も機能していた。電気も供給されていた。野菜などの換金作物のカトマンズ市場への搬送のためにも、道路補修は今後も継続した重要な課題であり、当地区でのサポートが必要とされる。
 カリカ小中高等学校(第1学年〜第10学年)の生徒数は450名で先生の数は10名(5名は公務員で残り5名はPTAがお金を出し合って雇用している)。カリカ小中高等学校の学区は広く、遠くの村から徒歩で2時間かけて通ってくる生徒もいる。また、教育レベルも高く、このレベルを維持していくためには現在の教員数(10名)の確保は必須である。しかし、生徒の親が出せるお金には限度があり、タマン夫妻がその多くの部分を担っている。タマン夫妻の貯えにも限りがあり、今後も教員補填のための援助が必要とされる。

3.カリカ小中高等学校での学童健診
 当日出席した学童350名の健診(身長、体重、視力、内科診察)を実施しました。4時間かかりましたが、学校側の全面協力のもとスムーズに実施することができました。データ処理が終わりましたら、近いうちにしかるべき場所で発表したいと思っています。

4.ドュリケルRCとのマッチンググラント
 2000−2001年関場年度に始められたDhulikhel RCと第2830地区とのマッチンググラント16318(ドュリケル市内緑化プロジェクト)が終了し、その成果を見てきた。内容は報告書の通りであるが、市内に6つの公園が完成しており、市民と観光客の憩いの場になっている。マッチンググラントとして、自然環境の維持のためのプロジェクトは珍しく、その成果がRIから注目されていたが、ドュリケルRCの会員の努力で素晴らしい結果が得られたことに感謝し、そしてともに喜びたい。

5.ローターアクターによる人形劇・日本伝統の遊びの紹介活動
 ドュリケル市内のEnglish Boarding School(英語とパソコンを教えられる私立のエリート中高等学校)で、弘前RACの3人が人形劇(タマン親子さんが通訳)を披露し、ネパールの青年たちに深い感銘を与えた。その後、日本伝統の遊びを通じての親睦交流活動が行われた。3名のアクターはホームスティを通じて、さらに地元の青年との交流を深めることができた。
 私はこれまでのネパール訪問に際し、2000年にはローターアクター4名、2001年にはインターアクター9名を連れて、タマン農場宿泊体験、カリカ小学校での奉仕活動、ドュリケル市での地元のロータリアンや青年たちとの交流活動に参加してもらった。参加した若者は、日本とは比較にならない程の物質的には貧困な環境で生活してみて、初めは大きなショックを受けるが、やがてそんな環境でネパールの人々がたくましく明るく生きている事に感動を覚え、ネパールの人々の生き方を自分たちの生き方に重ね合わせる作業を始める。そして、ネパールでの体験が彼らのそれからの人生に良い影響を与えているケースを少なからず見出すことができた。
今後もインターアクター、ローターアクターの親善ワークキャンプをネパールで実施することは、青少年健全育成上たいへん有意義であると考えるし、25年にわたり農業支援を続けてきた地区の財産を生かす道だと思う。

6.ポリオワクチン投与活動への参加
 私たちは、ドュリケル市内および周辺の村でのNID(国内ワクチン一斉投与日)に参加した。各ブースでは、ロータリアンや訓練を受けたボランティアの方々が、赤ちゃんたちにワクチンの投与を行っていた。ネパールでは、ここ3年間のポリオ発生件数が0であるが、お隣のインドからいつポリオが伝播してくるかわからないという。とにかくこの地上からポリオを撲滅するためには、インド、パキスタン、アフガニスタン、ナイジェリアから一刻も早くポリオを駆逐することが急務である。

7.ドュリケル市内ディーサービスセンター見学訪問
 ドュリケル市内にあるディーサービスセンターを見学訪問した。ここは、ヒンドゥー教のお寺を利用して、週一回土曜日、身寄りのないお年寄りや1人暮らしのお年寄りを集め、お茶や食事を提供している。ドュリケルRCの会員がポケットマネーを出し合って運営している。ドュリケル市はカトマンズ市から車で約1時間のヒマラヤ山脈のビューポイント観光都市であり、また交通の要所でもある。しかし、若者は仕事を求めてカトマンズへ移り、ドュリケルには1人暮らしのお年寄りや身寄りのないお年寄りが増えているという。このお年寄りのために何かをしようと始めたのが、このディーサービスセンター・プログラムであった。寄付はロータリアンのみならず、農民や多くの市民が行っていて、炊き出しや掃除には市民ボランティアの方々が協力して運営されている。ドュリケルRCではマッチンググラントを利用して、新しいディーサービスセンターの建設を計画している。

[終りに]
わが地区にとってネパール国アネコット村タマン実験農場は、今後も大事にしていかねばならないたいへん特別な存在であります。25年にわたって続けてきた農業支援の成果を維持・発展させて行くためには、今後も継続した親善活動、また時としては重点的な助成支援活動も必要なことが今回の訪問でわかりました。他の国でこれから同じような事を行おうと思っても、アネコット村のような成功をおさめる事は不可能でしょう。時、人そして熱意とが一つのベクトルへ向かったからこそ可能だったプロジェクトでした。私たちは、先人ロータリアンが残してくれた遺産を引き継ぎ、そして今後も発展させていく責務があると思います。

 マッチンググラント

今回のネパール訪問参加者 お馴染みの段々畑
視力検査中の千葉アジア親善委員 同じく竹内青森東クラブ会長
身長係りの工藤ローターアクター 体重係りの田名部弘前RAC会長
豪雨で削り取られた道路 豪雨で亀裂が入ったグランド
大好評だったアクターの人形劇
ポリオワクチン投与活動へ参加
マッチンググラントで造られた市内の公園
ディーサービスセンター




小学校前に3年前に私が植樹した
モミの木がこんなに大きくなりました。